CASE 33 海外の撮影クルーをターゲットにした録音や機材レンタルのサービスを提供する「トーキョークルー」。
さらには、父もリモートストリーミング会社「TOKYO PUNTO」を設立。
東京での親子両社の創業をサポート

代表
マリエル・ローニンガー さん

代表
カール・ローニンガー さん
「トーキョークルー」は、2016年にオーストリア出身のマリエル・ローニンガーさんが東京で設立した、制作会社向けのロケーション録音サービスや録音機材のレンタルサービスを提供する会社です。
マリエルさんは、録音技師としてロサンゼルスを中心に約15年間、映画やテレビ制作に携わってきました。その豊富な経験や技術を日本で活かすべく、起業されました。サービスの主な対象は、テレビ、広告、映画撮影、企業内動画撮影などで訪日する海外クルーです。
この「トーキョークルー」は、ビジネスコンシェルジュ東京(BDCT)を利用し起業を成し遂げた、創業人材受入促進事業の認定第1号の会社です。
起業から7年、当初は順調に顧客を増やしていたものの、コロナ禍により海外クルーが訪日できない期間が続き、苦戦を強いられました。しかしそれも、2022年の後半頃より需要は回復基調にあり、当初の忙しさに戻りつつあるといいます。
加えて、コロナ禍のなか、マリエルさんは新しい会社の設立に向けて動いていらっしゃいました。アイデアの発案者は、マリエルさんのお父さんである、カール・ローニンガーさんです。
カールさんもまた、ロサンゼルスで録音技師、音声編集者、映像編集者として長年活躍されてきました。そのカールさんが着目したのは、リモートストリーミングビジネスでした。
リモートストリーミングとは、たとえばスタジオやロケ地など離れた場所にある複数のカメラで撮影されたライブ映像を、モバイルセルラーネットワーク(4Gや5G等)の環境さえあれば、世界中の複数のどこからでもオンタイムで見ることができます。また、離れた場所にいる人が自分の映像を送り返し、インタビュー対象者(またはクルー)と直接通信を行え、対話ができるようにするサービスです。
このサービスを利用すれば、リモートで海外にいるディレクターと日本にいるリポーターが複数のライブ映像を同時に見ながら、スムーズに会話ができます。
カールさんは、このリモートストリーミング技術を活用して、ドキュメンタリーや企業の撮影、ニュースのインタビューなどのためのリモート撮影サービスを提供する会社を東京で起業しようと考えたのです――。
ビジネスコンシェルジュ東京(BDCT)によるサポート
- 日本法人設立にあたっての情報提供・アドバイス
- 日本法人の銀行口座開設のサポート
- オフィス物件探しのサポート
東京を拠点に選んだ理由
近年、日本ならではの文化や「おもてなし」の言葉に象徴される日本人のふるまい、生活習慣などの魅力が多くの外国人を惹きつけています。
そして、そうした日本の魅力を探るべく、実際に取材・撮影したいと考える海外メディアや制作会社は後を絶ちません。日本は、海外のさまざまな制作会社にとても人気がある撮影地なのです。
ところが、アメリカに比べ、日本はまだ海外メディアのクルーへのサポートや機材調達などのサービスが十分ではありません。特に、ロケ地での音声撮りに彼らはとても苦労しています。
そこで、テレビや映画撮影など海外クルー向けのロケーション録音サービスや録音機材のレンタルサービスの提供を目的に起業したのが「トーキョークルー」です。
狙いどおり、2016年の起業直後から多くの引き合いをいただき、海外の顧客を順調に増やしていました。そこに襲ってきたのがコロナ禍です。その影響を直接受け、非常に厳しい時期もありましたが、それも回復しつつあります。
そして、コロナ禍での大きなチャレンジとなったのが、リモートストリーミングサービスを提供する父の会社を、東京で起業することです。
コロナ禍で父が来日できないという悪条件のなか、BDCTのサポートを受け、2022年6月に会社設立に至りました。社名は「合同会社TOKYO PUNTO」です。
東京は日本の制作業界の中枢です。「TOKYO PUNTO」の将来の顧客の多くは東京に存在し、そこにビジネスチャンスも間違いなく広がっています。
ビジネスコンシェルジュ東京を利用した感想
どのようにしたら日本で起業できるか、Webサイトを通じていろいろと調べていくうちにたどり着いたのが、外国人の東京での創業をサポートするBDCTでした。東京都が運営しているという、安心感もありました。
日本で起業するには、在留資格「経営・管理」も必要ですし、そもそも日本で生活するための役所への各種の手続きや住居の契約手続きなど、必要な書類の多さやその作成の煩雑さに困惑しておりました。
起業するとなれば、なおさらです。先行き不安でしたが、BDCTへ相談に訪れてからは、創業人材受入促進事業の申請手続きはもちろんのこと、法人設立の実際の手続きに関しても東京開業ワンストップセンター(TOSBEC)にサポートしていただくなど、さまざまな手続きが比較的にスムーズに進みました。
書類に不備な点があったときもバイリンガルの相談員にアドバイスを受けて訂正するなど、とても助かりました。
特に、会社の銀行口座の開設に関してはなかなか承諾が得られず頭を抱えていましたが、これもBDCTのアドバイスやサポートもあり、何とか開設することができました。
また、父の起業に際してもBDCTには助けていただきました。コロナ禍のため父が来日できないなかで創業人材受入促進事業の申請や、会社設立の手続きを進めなければならなかったのですが、BDCTにサポートをいただき、プログラムの利用と共に会社設立にこぎつけることができました。父も大いに感謝しています。
今後のビジネス展開
コロナ禍も落ち着きをみせ、海外から日本に訪れる人たちも以前よりも増えてきました。
実際、海外からの撮影クルーの訪日も、徐々にコロナ禍前に戻りつつあります。
現在は再スタートのつもりで、海外クルーのニーズをさらに見極めながら、適切なサービスを提供していきたいと考えています。
父の会社である「TOKYO PUNTO」も、業界から注目を集めつつあります。コロナ禍はもちろん、その終息後もリモートストリーミングサービスは需要の高いサービスであり、その提供者は不足しています。
「ビジネスチャンスは豊富にある」と、父もさらに意欲をみせています。
また、「トーキョークルー」の顧客を「TOKYO PUNTO」に紹介し、その反対のケースもあるなど、両社のシナジー効果も見られるようになってきました。
まずは、一つひとつ丁寧に仕事をこなしながら顧客との信頼関係を築き、それを徐々に拡げていければ考えています。