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特区進出企業経営者インタビュー CASE 07

CASE 07 世界トップクラスの医薬品市場規模を誇る日本への進出

アスペンジャパン株式会社 代表取締役社長
フィリップ・オヴァロ氏
フィリップ・オヴァロ氏

アスペン社は南半球の製薬業界におけるリーディングカンパニーで、世界49ヶ国に拠点を置き、150ヶ国以上に製品を供給している。過去20年近く東京で暮らすオヴァロ氏はこの間医薬品業界で活躍し、うち約10年はグラクソ・スミスクライン社(略称GSK)に在籍し、執行役員を務めた。この二社が日本における新たな事業展開を決定した際に、アスペンジャパンの社長に任命された。

世界トップクラスの医薬品市場規模を誇る日本への進出

アスペン社は、医療用医薬品(処方薬)を主に扱う製薬会社で、製品にはジェネリック医薬品も含まれる。アスペングループ全体では、世界第5位のジェネリック医薬品のメーカーであり*、他にブランド医薬品や一般用医薬品、消費者向け健康・栄養食品も手がけている。アスペンジャパンでは医療用医薬品を主力に据える予定である。

日本の医薬品市場規模は世界第2位と巨大で、製薬会社にとって大きな魅力である。アスペンは豊かな発想と迅速な行動力を社是とする企業であり、南アフリカ共和国で創業後、またたく間に世界中に事業を拡大した。今日では49ヶ国に拠点を有し、150ヶ国以上に製品を供給している。アスペンは従来、 主要株主で世界有数の製薬会社であるグラクソ・スミスクライン社 (略称GSK)を通じて間接的に製品を供給してきたが、以前から日本での事業展開を模索し、市場参入の可能性、法規制、進出形態などについて何年も念入りに調査を行ってきた。

特に医薬品業界には各国がそれぞれの歴史・文化に根ざした独自の法規制を敷いていることが多く、日本特有の規制の知識なしには何事も進まない。幸運な事に、アスペン社が日本法人設立に向けて検討を進めていたちょうどその矢先、日本法人設立を支援するプログラムに巡り合った。このプログラムはアジアヘッドクォーター特区に進出する外国企業向けに東京都が提供するものである。東京都から、同社への申し入れは、まさに時宜を得たものであった。

東京都から外国企業誘致事業の委託を受けているコンサルティング会社は、アスペン社が日本市場に進出し成功する上でおさえておくべき様々な事柄について、調査し提案を行うと共に、許認可手続、人材採用その他の実務面において丁寧かつきめ細やかなコンサルティング支援を提供した。都の支援なしには物事がこれほど上手く行かなかったとオヴァロ氏はこのプログラムを高く評価している。氏の言葉を借りれば「アスペンはとても運が良かった。」

アスペンは2014年、長年協力関係にあるGSKと共同で医療用医薬品会社、アスペンジャパンを起ち上げることを決めた。

オヴァロ氏は、日本や東京の魅力を2つの異なる観点から分析している。1つ目はビジネス環境で、日本は処方薬については世界で第2位の巨大な医薬品市場であり、それは製薬会社にとって日本市場が極めて重要であることを意味する。さらに東京は、グローバル都市の中でも、所管轄官庁や同社のビジネスパートナーとなりうる製薬会社の本社が集積する特別な都市である。これは規制に即した事業展開とビジネスパートナーと共同での事業拡大に非常に適した環境である。

2つ目に生活環境については、オヴァロ氏は20年近く東京都心で暮らして来た経験から、東京は安全で住むにも、買い物にも、通勤にも、出張にも、快適で便利であるばかりでなく、ますます国際化がも進んでいると指摘する。氏の家族も東京で快適な生活を享受しているそうである。

オヴァロ氏は日本の法規制に従い、しっかりとした組織を作り上げることを計画している。アスペンジャパンは、ジェネリック医薬品を含む医療用医薬品を中心に据えた製品のポートフォリオをつくり上げる予定である。GSKをはじめとしたパートナー企業の協力により、同社は比較的早く着手出来る見通しだ。より長期的には、独自の新薬を開発することがオヴァロ氏の「夢」であり、それに向けて着実に事業を育てていく予定だ。

「発想力」と「迅速な行動力」を売りにするアスペン社が日本の医薬品業界にどのような新風を吹き込むのか、今後の展開を注視しよう。

* 出典:EvaluatePharma® "Worldwide Unbranded Generic Drug Sales in 2013: Top 20 Companies"

(村越 秋男)

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